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信州の匠を訪ねて

08 左官職人 伊藤健さん(伊藤左官工業所)

腕一本で仕上げる左官業
体験で塗り仕事の価値を伝えたい


朗らかな人柄が魅力の伊藤健さん、55才。
祖父の代から続く左官屋の三代目で、高校卒業後からこの道一筋37年。
三人の娘は独立し、現在は奥様と二人自適に暮らす。

 "参加型の家づくり" 先導役として

「一番やりがいを感じる瞬間は、一緒に塗り壁体験をしたお客様の表情がぱっと輝いて、喜ぶ顔が見られたとき。
お客様と職人がご一緒できる機会は、普通ありませんからね。お客様が工事に参加することがスタンダードな、工房信州の家づくりならではの醍醐味です」

工事中のお客様参加メニューを数多く提供する"ひとてま工房”のサービスのうち、ダントツで一番人気なのが"珪藻土塗り体験"だ。その家に住むご家族と一緒に工事現場に入り、コテの使い方をレクチャーしながら壁の一部を塗り上げてもらう。
工房信州の家がお客様の家づくり参加を提唱し始めた当初から、先陣を切って塗り壁体験を推し進めてくれた、意欲的な左官屋さんだ。

傍目には簡単そうに見えるコテ使いも、実際に体験するとその難しさがよく分かる。珪藻土の素材や職人の技に触れることで、お客様がその価値を改めて実感できることにもつながる。

「上手くできるかどうかではなく、自由にやってもらうことを大切にしています。
塗りものには無限の可能性がある。手形やメッセージを遺すのも、ビーズやタイルを埋め込むのも自由で、アイデア次第で何をやってもいい。クロス貼りのように決まりきった完成形はないので、ご家族が思い出を刻みやすい絶好の体験だと思います」


お客様の手を取って塗り影体験をフォローする伊藤さん。
小さなお子さんも含めたご家族全員で楽しめると好評だ。

 

体験で、新しい価値が生まれる

伊藤さんが初めてお客様と一緒に塗り体験を行ったのは、自身が20代半ばの頃。工房信州の家の展示場で、来場者と共に小さな木枠に塗り壁をし手形をつけるというイベントがあった。
コテ塗りの技を間近に見たお客様が目を輝かせて感激する姿は、伊藤さんにとって新鮮な光景だった。

折しも時代は長野オリンピックによる長野版バブル景気も終焉を迎え、建設業全体に低迷ムードが漂っていた頃。自然素材の家への理解度もまだ低く、左官屋としてこれからの仕事を模索していた時期であった。

「左官の仕事でこんな喜ばせ方もできるんだ!という驚きを、今も印象深く覚えています。そのときの発見が、今の自分の考え方の原点になっているかもしれません」


今では工房信州の家を建てる方の半数以上が行う手形付け。
塗りたての柔らかな珪藻土の感触が、いつまでも思い出に残る。


 

(後編は2月下旬に更新します)