

私たちは "信州の住文化を創造する"ことをテーマとし、これまで十数年にわたって「工房信州の家」の取り組みを進めてきました。平成23年3月、突然の大災害に見舞われた日本は、これまで当たり前であった現代の生活を見直すべき大きな転換期を迎えています。「工房信州の家」も、改めて私たちの取り組みの意義を振り返る機会を得ることとなりました。
また、伊那で誕生した「工房信州の家」が、諏訪、松本、そして長野へと、県内全域に施工エリアを拡大してきた中で、信州各地の皆様にとって本当に快適な住まいがご提供できているのかも改めて見直すべく、お客様の暮らしぶりの調査を行いました。すると、そこから見えてきた「工房信州の家」ならではの住まい方は、私達自身も驚くべき、想像以上のものであったのです。そして、私たちは信州に密着した地元の住宅会社として、これからの時代にどのような住まいを提供していくべきかを、これまで以上に明確にすることができました。
ここでは、「工房信州の家」誕生までの住宅業界の変遷と、時代の変化の中で私たちが目指すべきビジョンをお話しします。きっと、「工房信州の家」をより深くご理解いただくための一助となるはずです。




日本の家づくりは、時代の波にさらされながら急激な変化を余儀なくされてきました。住宅業界が大きな転換期を迎えたのは、高度経済成長期の昭和30~40年代のことです。飛躍的な経済成長と、東京オリンピックや大阪万博などの開催による特需も加わり、終戦直後の復興から続く一連の経済成長は「東洋の奇跡」と呼ばれ世界的にも稀にみる急速な発展を遂げました。
この時代、「大量生産大量消費」型の経済活動が一気に加速し、昭和43年には国民総生産(GNP)が資本主義国家の中で第2位に達しました。具体的には、昭和30年代の『3種の神器=テレビ・洗濯機・冷蔵庫』から、昭和40年代の『3C=カラーテレビ・クーラー・マイカー』へと、充実した耐久消費財が続々と一般家庭に普及していきました。
経済の目覚ましい発展は、東京・名古屋・大阪などの大都市圏にまたがる太平洋ベルト地帯を形成し、ここが工業出荷額の約70%が集中する日本経済の中心地となり、交通機関や施設が急速に整備されていきました。労働人口はこの地に集中し、昭和35~50年の15年間で、東京・大阪・名古屋の三大都市圏には1533万人が流入、日本の人口のうち約65%がここに集中するという大移動が起こりました(図1・2)。その一方、それまで全国に300万戸あった専業農家は85万戸にまで激減しました。
こうして、日本人のライフスタイルは大きな変化を遂げたのです。伝統的地域社会は崩壊し、核家族化が進み、多摩ニュータウンなどに代表される大型のベットタウンに住みスーパーマーケットで買い物という暮らしがもてはやされました。
住宅の新築着工戸数をみると、急激な右肩上がりのグラフが、この時代の住環境の変化をよく物語っています(図3)。



それまで日本の伝統的な家づくりと言えば、地域に根差した大工さんの手による家づくりでした。しかし、この時代で求められた住宅には「早く、大量に」というニーズが最優先となりました。時代の波に乗って、「大量生産大量消費」型の生産が急務となった住宅業界―ここで誕生したのが、大手主導のハウスメーカーなのです。
時代のニーズに合わせて誕生した大手ハウスメーカーの家づくり。特に、人口が流入し新築ラッシュとなった都市部において効率よく住宅を建てることが最優先課題となり、どんな土地にでも合う四角い画一的な規格住宅が誕生しました。大手企業の生産力を活かして、誰でも・早く・同じように効率良く建てられる製品として、ハウスメーカーの住宅は一気に普及しました。今でこそ家づくりの代名詞ともいえるハウスメーカーですが、実はこういった形態の住宅会社は海外には存在せず、高度経済成長期を経験した日本特有のものなのです。
こうして、個々の大工の技でつくられていた地域特有の住宅は、画一的なハウスメーカーの工場生産品へと一本化されていきました。それはつまり、大都会の東京でも、極寒の北海道でも、高温多湿な九州でも、大自然に囲まれた信州でも、日本全国同じ住宅が建てられるということであり、どんな場所でも快適に過ごせるよう外の環境から室内を隔離したつくりになっているのです。

日本が急激な発展を遂げたからこそ誕生した、大量生産大量消費型の家づくり。しかし、高度経済成長期が終焉を迎え、少子高齢化が叫ばれる現代、持ち家数は充足していると言えるでしょう。そして今、日本の住宅は築平均26年で取り壊されています。アメリカでは平均44年、イギリスでは平均75年という解体までの寿命と比較すると、日本の住宅産業がいかに大量消費型の考えになってしまったかが分かります。
今、日本の家づくりはもう一度大きく舵を切るべき時を迎えています。慌ただしく量ばかりを追い求めた大量生産大量消費の住宅産業から、家族の心がほっと解き放たれるような豊かさのある住まいづくりへと―。


これまでお話してきたとおり、日本では全国どこでも同じ家が建てられてきました。しかし、私たちは信州で生まれ育ち、信州の住文化を創造する企業として、本当に信州に適した家づくりとはどのようなものかを考え抜いてきました。
画一的な家づくりと、信州ならではの家づくりには、どのような違いがあるのか。ポイントごとにひとつひとつ考えていきましょう。

大量生産大量消費の時代に普及したのは「高気密高断熱住宅」。家を厚い断熱材で密閉することで自然界から切り離し、外の温度に影響されずに冷暖房に頼るつくりとすることで、日本全国で同じ住宅が建てられるようにしたのです。その結果、夏涼しい信州であるにも関わらず、夏はエアコンに頼らなければ過ごせない、密閉型の魔法瓶のような住まいが多くなってしまいました。
例えば、北海道の極寒の気候から室内を守るためや、東京の込み入って湿度の高い環境から室内を隔離するためであれば、こうした高気密高断熱の住まいが適する地域ももちろんあります。しかし、この信州には、自然と隔離する住宅が最適と言えるでしょうか。

信州の気候条件を見てみましょう。まず、長野と東京の気温を比較すると、1月の寒さは信州の方がもちろん厳しく6℃以上の気温差があります。8月の暑さはというと、最高気温はほとんど同じであるのに対し、最低気温は4℃以上の差があります。また湿度も低く爽やかな気候です(図4)。
つまり、信州では、直射日光を遮り、夕方から朝にかけての涼しさを上手く住まいに取り込むことができれば、木陰のような心地よい住空間が得られるのです。

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また、日照時間の図を見てみましょう。長野県の年間日照時間は平均2,000時間と、全国的に見ても太陽から受ける日射エネルギーに大変恵まれた地域であることが分かります(図5)。
こうした豊かな自然環境を上手に住まいに取り入れる住宅があれば、信州では自然と共生して快適に暮らすことができるのです。
そこで、私たちが信州にぴったりの工法として辿りついたのが「エアパスソーラー工法」でした。エアパスソーラー工法は、住まいが夏と冬で衣替えし、夏のカラリとした風の力と、冬のぬくもり豊かな太陽の力で、自然エネルギーを最大限利用して快適な居住空間を創造します。
実際に、これまで施工した「工房信州の家」のお宅のエアコン設置率を調査したところ、たったの7.6%という結果が得られ、私達自身改めて驚かされました(図6)。長野県内の一般家庭でのエアコン設置率78.6%と比較しても大きな違いです。また、猛暑の2010年夏のお住まい心地をお聞きすると、「一度も使わなかった」という方や、「使う時間が短くなった」などのお声を多数いただきました。いずれにしても、自然環境と上手に共生する、省エネな住まいであると言えるでしょう。



住宅の敷地環境は地域によって大きな差があります。その明確な違いのひとつが、敷地面積。住宅一棟あたりの平均敷地面積を比較すると、東京の143.38㎡(43.37坪)に対し、長野は349.67㎡(105.77坪)と、二倍以上の差があります(平成20年国勢調査より)。建物が密集した東京では、閉鎖型の間取りが快適な住空間をつくる最善策になり得るでしょう。しかし、信州で同じように閉鎖的な暮らしをするのは余りに勿体ないことです。
せっかくこのゆとりある信州に家を建てるのならば、外の環境まで住まいに活かせるよう、外とのつながりを取り入れたプランニングをしましょう。お庭や畑とのつながり、樹木や山並みの眺め、そして新鮮な空気‥。空間を外まで伸びやかに広げる土間サロンや開放的な窓を効果的に設けて、家の中にいながら外の環境を楽しめるようなプランニングができれば、住まいの豊かさはぐっと高まるはずです。そして、こうした豊かな住まい方は、信州だからこそ実現できる特権であるといえるでしょう。





日本列島はその地域ごと、多様な気候風土があります。雪の多い新潟や、台風の多い鹿児島や、密集地である東京など、それぞれの土地柄にぴったりと合ったデザインで住まいづくりをするべきです。
しかし、これまでお話してきたとおり、全国展開のハウスメーカーが高いシェアを占めている日本では、全国どこでも同じデザインの住宅が建てられているのが現状です。
信州には信州に似合う、信州でしかできないデザインの住宅があるはずです。
県土の約8割が森林で、アルプスの山並みが美しい信州では、山並みに寄り添うようなデザイン(切妻や大屋根、外部板張り)がよく似合います。また、内部も自然の恵みを生かした無垢の木や珪藻土を豊富に使用した空間が、この信州にはふさわしいと言えるのではないでしょうか。


大量生産の家づくりが主流になった時代、家づくりの素材も大きく変化しました。それまで地元で調達していた木材は、安価で大量に入手できる輸入材に取って代わられ、また大量生産に適した均一な材料として集成材が普及しました。
しかし、この信州の地を見返すと、そこには豊富な木材資源を有した広大な森が広がっています。特に、戦後植林された豊富な木材が、今まさに建築用材として利用可能な適齢期を迎えています(図8)。身近にこれほどの豊かな資源があるにもかかわらず、県産材を使用した住宅は、全体のうちわずか5%程度にとどまっているのです。


さらに、身近な資源の利用は、輸送エネルギーの大幅な削減にもつながります。例えば、約38坪の一般的な木造住宅を建てるケースを想定した場合に、県産材住宅、国産材住宅、一般住宅、欧州材住宅、という木材産地の異なる4つの住宅を比較すると、上図(図9)の通り、木材の輸送過程排出CO2に明快な差が出ます。県産材住宅と欧州材住宅の比較では、木材を運ぶ際のCO2排出量が6,288㎏異なり、分かりやすく身近なエネルギーに換算すると、2,734リットル分のガソリンの消費エネルギーと同等、地球一周分のエネルギーにも相当し得るのです!(燃費15km/Lで計算)
信州の家には信州の木を使うことが、いかに自然なことであるか、お分かりいただけるのではないでしょうか。

大量生産の時代に必要とされたのは、短い工期で、均一な品質で施工ができることでした。職人技と日数が必要な塗り壁は施工しやすいクロスになり、個性のある無垢材は加工が容易な合板やフローリングへと取って代わられ、その弊害としてシックハウス症候群も問題となりました。シックハウスを発症すると、もうその家に住み続けることはできません。
特に、小さな乳児は大人の5倍近くの空気量を吸っており、身体に不要な物質を分解する代謝機能も未発達、さらに床など建材に近い位置で生活するため住環境の影響を強く受けざるを得ません。ご家族の健やかな生活の舞台となる住まいが、ご家族の健康を脅かす原因となることは決して許されません。特にこの新鮮な空気に満ちた信州で、住まいは安心して深呼吸できるような空間であるべきです。
私たちは、自然素材で仕上げた健康住宅にこだわって、十年以上前から取り組んできました。自然素材のメリットは、もちろん、有害な化学物質がほとんど出ないことです。その上、木材や塗り壁は優れた調湿機能を持ち、さらに二酸化窒素やオゾン等の減少などの空気清浄化機能を持つことが近年科学的にも証明されてきました。きれいな空気に包まれた住空間は、そこに住む人の健康はもちろん、建物を長期にわたって良好に維持することにもつながります。


信州は豊かな環境に満ち溢れた土地です。四季折々の自然の移り変わりを、暮らしの一部として楽しむ、豊かな住まい方ができるのです。
夏には、打ち水された庭から、すだれ越しに流れ込む涼風が室内を満たします。夕方には、爽やかな風に吹かれながら、ウッドデッキで賑やかなバーベキューパーティーです。
秋の深まりとともに、稲穂は黄金色に輝き、山々は鮮やかな紅葉に覆われ始め、夜にはお月見を―、そんな自然の色彩を楽しみながら、土間サロンでコーヒーを味わうのも素敵です。
冬の寒い朝、真っ青な空の下に連なる白く輝くアルプスの稜線と一面の雪景色―、雄大な自然の風景を、大きな窓越しに贅沢に楽しみます。夜が更けたら、薪ストーブの揺らめきを照明代わりに、夫婦の時間をゆっくりと過ごしましょう。
そして春になれば、こぶし・梅・桜・花モモ・花みずき・ツツジなどが咲き誇り、それを追いかけるように広がる新緑を眺めながら、時には土間サロンで朝食をとるのも良いでしょう。
「工房信州の家」は、こうした信州の素晴らしい自然環境や景観を活かし、そして住まう方がそれらを楽しめる家づくりなのです。
さらに、夏涼しくクーラーなしで過ごし、冬暖かく薪ストーブ一台で過ごす―。春夏秋冬、一年を通して本当の意味で快適に過ごすためには、機械で温湿度を年中一定に調整する魔法瓶のような家ではなく、自然環境を住まいに取り入れ上手に活かす工夫をすること―。それが、『工房信州の家 設計Design Code』です。




住まいのベースとなるのは、夏の打ち水やすだれ、冬の薪ストーブなど、昔からの信州らしい住まい方。
さらに、信州の気候を活かすエアパスソーラー工法で、過度な冷暖房に頼らず、自然と共生する住まいとなります。
また、敷地の広い信州にピッタリの土間サロンやウッドデッキがあれば、暮らしは一段と豊かさを増します。
そして、木目や香りまで楽しめる良質な信州の木材と、空気を浄化し調湿機能を備えた珪藻土などの自然素材で仕上げます。
さらに、信州の景観に馴染むデザインとすることで、住む人にとってはもちろん街全体にとっても価値ある建物となります。
もちろん大前提として、地震に強い耐震等級2等級とし、建築基準法で定められた基準(数百年に一度の大地震でも倒壊・崩壊しない)の1.25倍の建物強さで、災害からご家族をお守りする安心の住まいです。







フォレストコーポレーションの住宅のブランド名を『工房信州の家』とし、取り組みをスタートしてから十数年。当初はまだまだ漠然としたイメージでしかなかった「信州らしい家づくり」も少しずつ形になり、私たちの家づくりに対する考え方も明確になってきました。
私たちはこれからも、信州に特化した住宅会社として、信州の恵まれた環境を住まいに活かし、また信州の暮らしを存分に楽しむことのできる「信州らしい家づくり」を追求し続けます。そして、職人さんと力を合わせて共に学び、さらなる発展を目指し、信州にお住まいの皆様に喜んでいただける「工房信州の家」づくりに取り組んでまいります。

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