花、蝶々、鳥、空の色・・・目に入るもの全てが毎日新鮮。

茅野市へ移住 O様

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湖のほとりを歩く夫婦

DATA
【リタイア移住】
移住先/茅野市【八ヶ岳エリア】
移住年月/2015年
年代/60代
家族構成/ご夫婦

 

移住のきっかけ

ご主人
学生の頃から菅平の上の峰の原というところに通い始め、結婚してからも年に必ず二回位、夏と冬に家族連れで遊びに来ていました。
空気の重さが違うんです。
もともとは関西に居ましたから、夏の暑い日は空気が覆いかぶさってくるような感じがします。でもこっちに来るとすごく軽やかで気持ちよく、とてもいい所だなと思いましたね。

やがて仕事も年数が経ってくると面倒くさい仕事が増えてきて、長野に来ていると「ああもう嫌だ、神戸に帰りたくない」という気持ちがどんどん強くなっていったのも一つあります。

そんな頃に一冊の本に出会いました。みなみらんぼうさんの『八ヶ岳キッチン』という本です。
らんぼうさんは小淵沢に山荘を持っているのですが、そこでの暮らしが生き生きとしていました。やっぱりいいよなと思ったのと同時に、(菅平峰の原には関西から8時間くらいかかるのですが)八ヶ岳だったら5時間で行けると思い、「八ヶ岳に行くぞ!」と家で宣言したのです。

ところが三人の子どもの一番下で、当時小学校5年生だった次男が「たまに行くからええねんで信州は」と行って、全然ついてくる気配がありませんでした。
そこから陰に籠って何か良い方法はないかな、と考えているうちに、今度は柳生博さんの本に出会いました。こちらも八ヶ岳の麓が舞台でしたが、やはり背中をどーんと押されました。やっぱりこちらにこないとだめだなと思いましたね。
松本の知り合いが『田舎暮らしの本』をお勧めしてくれたのをきっかけに物件を見始め、この土地に建っていた古い家を見つけました。

 八ヶ岳の麓の湖

 

 

移住を考える上で悩んだこと

ご主人
一番はお金ですね。
関西にも拠点を置きながらこちらに住むのが理想でしたが、それはあまりにも金銭的に現実味が無かったし、せめて子どもが離れてからという考えがありました。
そして妻がついてきてくれるかも不安でした。二拠点であれば良いですが、拠点を移すのであれば妻の理解が得られないと、一人で住むというわけにはいかないなと思っていました。

 

奥様
子どもが成人してそれぞれ仕事を持ったり、家庭を持ったりして家を出ていったので、そこはまず一つクリアしました。

もう一点は夫婦とも80代後半の母が健在です。
本当であれば神戸に住んで、両方の親の面倒を見なくてはならないのにこちらに来る、というのが私は一番のネックでしたね。
ただ「本当に引っ越したい」と言った時に母たちはとても元気で、「自分たちのせいで子ども達の夢が叶えられないのはとても悲しい」と言ってくれました。背中を押してもらいましたね。今も元気で一人暮らしをしてくれています。

あまり先のことを考えてもどうなるか分からないのであまり深く考えずにおこうと思いました。

 

ご主人
ここに建っていた家を手に入れたのが今から20年くらい前です。
その古い小さな家への行き来をひと月に2回ぐらいしながら過ごしてきたのですが、14年がかりで妻は「しょうがない」と諦めたようです。

 

 

移住して良かったこと

ご主人
花を見て、蝶々を見て、鳥を見て、空の色を見て・・・目に入ってくるもの全てが毎日とても新鮮で、やっぱりこういうところで暮らしていくのが生き物の本来の姿なんだろうなと思いました。とにかく毎日が楽しくて仕方ないです。

植物には全然興味が無かったんですよ。
都会にはない花をたくさん見ますし、紅葉一つとってもそうです。もともと京都の出身なので、京都の紅葉がいかに赤いか、いかに作られたものかということを感じます。ここに来ると趣が全然違うんですよね。そういった自然に心惹かれます。

窓からの景色

 

奥様
私は生まれも育ちも岡山の田舎だったので、田舎暮らしは珍しくもなんともありませんでした。
どちらかというと、都会を離れることの方が不安で、買い物行くのに30分かかる、デパートがない、ということに最初は抵抗がありましたね。

でも自然が都会の自然とは全く違うのです。
朝皆さんがわざわざ山登りに来られるのですが、近所を小一時間散歩するだけでハイキングをしているような感じです。

空気の軽さも最初は分からなかったのですが、しばらくここにいて都会に帰ると空気が重いと感じるようになりました。ここに帰ってくると深呼吸して爽やかな気分になります。そういう意味ではより健康になったなという感じがしています。

 湖を散歩する夫婦

 

 

移住後の暮らしの変化

ご主人
ご近所さんと一緒に畑を借りています。美味しい野菜がたくさん採れて、とにかくどんどん消費しないといけないです。一日にきゅうりが15本採れたりするので、「これどうする?」というのがきっかけだったと思うのですが、私が結構料理をするようになりました。
そのうちに今度は私が料理するので、妻に働いてもらおうということになりました。

 

奥様
今までフリーの仕事をしていたのでフルに働いたことがなかったのですが、夫がこちらで仕事を見つけてくれ、立場が逆転しました。
子どもが好きで、神戸でも絵本の読み聞かせをやっていました。こちらでもその活動と共に、学童クラブの指導員の仕事が見つかり、今は月~金曜日の午後からフルに働いています。その代わり19時前に帰ってきたら大体ご飯の準備ができているというのはとても新鮮ですね。

 飾られた絵本

 

 

別荘地での付き合いと地の人との付き合い

ご主人
この歳になると、世界をわざわざ広げる必要はないと思うようになりました。
気の合う人と濃密な時間を過ごせたらいいなと思っています。大体同じベクトルを持っている人たちの中でも年齢が近かったり、飲むお酒の量が似ていたり、そういう人たちと出会えたことで一緒にご飯を食べたり田んぼをやったりと楽しんでいます。

妻は女子会といってお茶会をしたりと、そういうお付き合いが今はとても充実しています。

 

奥様
私は神戸でやっていたことをここでもやりたいという思いがあったので、まずは市役所に行って「読み聞かせをしているグループはありませんか」と尋ねました。

今は3つのグループに入り、地元の人たちと絵本を通じての活動をさせてもらっています。その繋がりからまた別のコミュニティに紹介して繋がったり、仕事の関係から家族ぐるみでお付き合いできるようになったり、そういったことも楽しいです。和が広がっていくのが。

もともと、私は「地元の中にどっぷり入る田舎暮らしは嫌だ」と言っていました。
『他所から来た人』のような印象を持たれると住みにくいので、「田舎暮らしをしてもいいけれど、元々いる人たちの中に入れてもうらうような田舎暮らし嫌だよ」という条件を出していました。

たまたま見つかった家が別荘地にあったので、別荘地内での付き合いもあり、地域の人とも少し離れた関係でお付き合いできる環境は私にとってはとても条件の良いところでした。

 

ご主人
友人たちは同じ気持ちで同じ時を過ごそうよということで、楽しみにここに来てくれています。
ミュージシャンの友達がいるのですが、毎年彼と仲間たちと一緒にお酒を飲んでギターやバンジョーを弾くひと時を過ごしていました。そして今年初めてコンサートを開いてみました。ウッドデッキをステージにして、庭にはお客さんが30人くらい集まって本当に楽しかったです。

 

 

自作のウッドデッキ

ご主人
143時間、40日くらいかけて作りました。
ご近所さんに何でも自分で作る人がいて、「出来るよ、簡単だよ、教えてあげるよ、手伝ってあげるよ」と言われたので、木の購入から始まり、木材にペンキを塗って、というところから少しずつ積み上げていきました。
最初、沓石を並べて固定する時は形が見えてこず辛かったです(笑)根太を張って、板を一枚二枚と張っていった時には形が見えてきてとても楽しくなっていきました。

制作中のウッドデッキ

完成したウッドデッキ

間取りでは居場所の多い家にしたいという思いがありました。
子ども達や友人が来ることを想定し、リビングを広めにしたり、和室やウッドデッキ、土間、キッチンの向かいにあるカウンターなど、居場所をたくさん作りました。

また炉台や炉壁も自分達でレンガを貼っていきました。工事の最中に入らせてもらって、三日かけてやりました。

 

奥様
上に行くほどだんだん上手になりました。

 自作の炉壁拡大

 

 

ここだけの草花を愛でるひと時

ご主人
木と土でできているので、温もりがありますよね。
床はこの土地に生えていたカラマツを製材してもらって使ったので、この床自体に温もりを感じますね。

あとコンサートをすると、響きがすごく良いです。

この別荘地に住んでいる人たちは野に生えている草花をさりげなく部屋に飾っているので、うちも頑張って玄関とトイレには絶えず花を飾っておきます。そういうことを楽しんでいます。

 

奥様
呼吸している感じがします。

神戸は都会と言っても、周りに自然があります。
ただここには都会にはない、飾って楽しめる花たちがたくさんあります。見たことないような花がたくさんあって、一輪かざるだけでも絵になり、それはすごく楽しいですね。

 玄関に飾った草花

 

 

自慢ポイント

奥様
暖かいし、涼しいです。
家の作りもあると思うのですが、真夏でも夜窓を開けて寝ることはないです。寝る時には布団をかけずに寝ますが、明け方には羽毛布団を取り合っています。昼間でも網戸にすることは夏の間1,2回しかないです。

真夏でもそれぐらい涼しいですし、冬は薪ストーブを焚くので暖かく、年中同じ格好で寝ています。クーラーも扇風機もいらず、冬はストーブ1つで十分なのは本当に快適です。

 

ご主人
冬の最低気温は-20℃ですが、ストーブを焚くと22、23℃になります。毎日暖かく過ごしています。

 

奥様
引っ越してきてから、暖房はこの薪ストーブしか使っていないです。
都会にいた頃は、暖房の他にもホットカーペット等を使っていましたが、本当に薪ストーブ1台で過ごせます。お料理もできるので電気代がかからず暖かく過ごせます。

主人は火を見ながらお酒を楽しんでおり、とても良い雰囲気です。毎晩最高です。

 薪ストーブ

 

 

移住を検討している人へのアドバイス

ご主人
できれば時間をかけて移住先の場所を体感してほしいなと思います。
理想ばかり先走って現場を知らないと、自分達には合わないコミュニティかもしれないし、暮らせるような場所ではないかもしれない。そういった可能性を考えたら、時間をかけてその場所を見ることが大切だと思います。

私の場合はここに来て、実際に住むという覚悟を決めるまでに14年かかっています。時間をかけて覚悟ができたし、妻には覚悟してもらいました。私はここに来て窓から外の景色を見ているだけで幸せでしたから、どんどん確信を高めていく時間でしたね。

 

奥様
知らない土地に来るので、いかに新しく人と出会うかで生活がとても変わると思います。
私たちの場合は14年間行き来していたので、ご近所さんとの付き合いがありました。また神戸でやってきたことをこちらでもやりたかったので自分でコミュニティを探しました。
夫婦2人だけだと息詰まることがあると思うので、新しい生活の中で知り合う人達がいるといいのかなと思います。

私たちもここに住んでいる人達から話を聞いたり、「お茶していって」と親しくしていただいて今があるので、今度は逆に私達がこれから来たいという人にそういった役目を果たして恩返しをしていきたいですね。