信州の匠を訪ねて

木を扱う楽しさを、ご一緒に

「ものづくりの楽しさを、体験で伝えたい。私ももともと素人ですから、プロと素人という線引きをせず一緒に楽しみましょうという気持ちでやっています」。

木のぬくもりある家具や小物をつくり、近年は木工体験の講師としても活躍する日下部良也さん。
この日、モデルハウスで開催したワークショップは “伊那谷香る、ヒノキのお風呂椅子”。日下部さん考案の初めての体験メニューだ。「なぜお風呂椅子かというと、私が欲しいものを皆さんと一緒に作りたかったから(笑)。毎日使うものだから、そのたびに手づくりの愛着を思い出してもらえるかなと」。
シンプルなつくりに見えて、少しのズレで不安定になる繊細さがあり、磨くほど肌触りのよさを増す工程に子どものみならず大人も夢中になっていく。参加されたある60代ご夫婦は、完成した一脚をいつまでも愛おしそうに撫でるご主人の様子に「しばらくは抱いて眠るんじゃないかしら」と奥様が笑う。
この日もお客様にとって、木工への親しみが深まる貴重な体験になったようだ。

日下部さんの代表的な木工体験メニューといえば “エアパス引き子づくり”。換気口の開け閉めに使う引き子を無垢の木で手作りする。風合いの異なるいろいろな樹種で、自分好みの形にアレンジできると好評だ。「凝った形状のご要望も実現できるよう、筋道をつけながら一緒に制作していきます。木は加工しやすい材だから、身近に感じて楽しんでほしい」

 
木工体験でお客様に手ほどきする日下部さん。

 

地域の山を育み、子どもたちを育むために

この日のワークショップで使ったヒノキ材、実は日下部さん自らが伊那谷で伐採した木だという。
6年前から伊那市の薪ストーブ仲間たちと「西地区環境整備隊」なる有志団体を立ち上げ、間伐作業を請け負っているのだ。
目的は里山整備と薪づくりだが、山に行くと薪にするには勿体ない良材に出会うことがあり、家具用として買い取ることもあるのだそう。「山主さんにとって “山の木がお金になった" 経験は、山に目を向けるきっかけになるはず。ユーザー目線のものづくりはもちろんですが、木の循環の一部を担う立場として、山の価値を高めるような貢献ができればと思っています」

ほかにも伊那市の “ウッドスタート” 事業に参加し、車のおもちゃなどをオリジナルで制作している。「赤ちゃんがはじめて絵本に触れるブックスタートのように、はじめて木のおもちゃに触れるのがウッドスタート。地元産の木で、地域の子どもたちを育むお手伝いができる、やりがいのある仕事です」。

伊那市に移住して17年、地域に根差した活動が伊那谷の山と人に良い循環を生み始めている。

 
日下部さん指導の下、お客様が手作りした引き子。
楕円型、しずく型、ビン型など、少しずつ形が異なる面白味がある(写真左)
電車好きのご家族の新幹線シリーズは超大作!(写真右)


(後編は8月下旬に更新します)

コラム|信州の匠を訪ねて

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