私たちの思い

日本の住宅の歴史と工房信州の家の挑戦

家づくりを物語に

"信州を楽しむ 豊かな暮らし" をテーマとして、2000年に伊那からスタートした「工房信州の家」ブランド。

単なる器としての建物づくりから、ご家族の宝物になるような家づくり物語を紡ぎたい。
お客様に体験していただく場面を数多く設け、ご家族ならではの "家づくり物語" を、多くのスタッフや職人さんと共に創り上げてきました。

しかし平成23年の東日本大震災を筆頭に多くの災害に見舞われた日本は、今まさに新型コロナウィルスの感染防止のため、これまで当たり前であった日常生活を見直すべき転換期を迎えています。
そして「工房信州の家」も、改めて私たちの取り組みの意義を振り返る機会を得ることとなりました。

人が帰る場所・休む場所という家の役割が、余暇を楽しむところにもなり働くところでもある、多機能な場に変化しつつあります。
そんな時代を迎える今、私たちは本当の意味で "信州を楽しむ 豊かな暮らし" と快適な住まいがご提供できてきたかを改めて見直すべく、お客様の暮らしぶりの調査を行いました。すると、そこから見えてきた「工房信州の家」ならではの住まい方は、私達自身も驚くべき、想像以上のものがありました。私たちは信州に密着した地元の住宅会社として、これからの時代にどのような住まいを提供していくべきかを、これまで以上に明確にすることができました。

ここでは「工房信州の家」誕生までの住宅業界の変遷と、時代の変化の中で私たちが目指すべきビジョンをお話しします。「工房信州の家」をより深くご理解いただければ幸いです。

株式会社フォレストコーポレーション
代表取締役社長 小澤 仁

 

 

日本の高度経済成長期と、ハウスメーカーの誕生

東洋の奇跡がもたらした、住環境の変化

日本の家づくりは、時代の波にさらされながら急激な変化を余儀なくされてきました。住宅業界が大きな転換期を迎えたのは、高度経済成長期の昭和30~40年代のことです。飛躍的な経済成長と、東京オリンピックや大阪万博などの開催による特需も加わり、終戦直後の復興から続く一連の経済成長は「東洋の奇跡」と呼ばれ世界的にも稀にみる急速な発展を遂げました。

この時代、「大量生産大量消費」型の経済活動が一気に加速し、昭和43年には国民総生産(GNP)が資本主義国家の中で第2位に達しました。具体的には、昭和30年代の『3種の神器=テレビ・洗濯機・冷蔵庫』から、昭和40年代の『3C=カラーテレビ・クーラー・マイカー』へと、充実した耐久消費財が続々と一般家庭に普及していきました。

経済の目覚ましい発展は、東京・名古屋・大阪などの大都市圏にまたがる太平洋ベルト地帯を形成し、ここが工業出荷額の約70%が集中する日本経済の中心地となり、交通機関や施設が急速に整備されていきました。労働人口はこの地に集中し、昭和35~50年の15年間で、東京・大阪・名古屋の三大都市圏には1533万人が流入、日本の人口のうち約65%がここに集中するという大移動が起こりました(図1・2)。その一方、それまで全国に300万戸あった専業農家は85万戸にまで激減しました。

ず1) 高度経済成長期の人口の推移/ 図2) 総人口に占める割合

こうして、日本人のライフスタイルは大きな変化を遂げたのです。伝統的地域社会は崩壊し、核家族化が進み、多摩ニュータウンなどに代表される大型のベットタウンに住みスーパーマーケットで買い物という暮らしがもてはやされました。

住宅の新築着工戸数をみると、急激な右肩上がりのグラフが、この時代の住環境の変化をよく物語っています(図3)。

図3) 人口と新築戸数

 

 

住宅の「大量生産、大量消費」

それまで日本の伝統的な家づくりと言えば、地域に根差した大工さんの手による家づくりでした。しかし、この時代で求められた住宅には「早く、大量に」というニーズが最優先となりました。時代の波に乗って、「大量生産大量消費」型の生産が急務となった住宅業界―ここで誕生したのが、大手主導のハウスメーカーなのです。

ハウスメーカーが生み出したのは、外の環境から室内を隔離した住宅

時代のニーズに合わせて誕生した大手ハウスメーカーの家づくり。特に、人口が流入し新築ラッシュとなった都市部において効率よく住宅を建てることが最優先課題となり、どんな土地にでも合う四角い画一的な規格住宅が誕生しました。大手企業の生産力を活かして、誰でも・早く・同じように効率良く建てられる製品として、ハウスメーカーの住宅は一気に普及しました。今でこそ家づくりの代名詞ともいえるハウスメーカーですが、実はこういった形態の住宅会社は海外には存在せず、高度経済成長期を経験した日本特有のものなのです。

こうして、個々の大工の技でつくられていた地域特有の住宅は、画一的なハウスメーカーの工場生産品へと一本化されていきました。それはつまり、大都会の東京でも、極寒の北海道でも、高温多湿な九州でも、大自然に囲まれた信州でも、日本全国同じ住宅が建てられるということであり、どんな場所でも快適に過ごせるよう外の環境から室内を隔離したつくりになっているのです。

 

 

「工房信州の家」に与えられた使命

日本が急激な発展を遂げたからこそ誕生した、大量生産大量消費型の家づくり。しかし、高度経済成長期が終焉を迎え、少子高齢化が叫ばれる現代、持ち家数は充足していると言えるでしょう。そして今、日本の住宅は築平均26年で取り壊されています。アメリカでは平均44年、イギリスでは平均75年という解体までの寿命と比較すると、日本の住宅産業がいかに大量消費型の考えになってしまったかが分かります。

今、日本の家づくりはもう一度大きく舵を切るべき時を迎えています。慌ただしく量ばかりを追い求めた大量生産大量消費の住宅産業から、家族の心がほっと解き放たれるような豊かさのある住まいづくりへと―。

「工房信州の家」に与えられた使命「工房信州の家」に与えられた使命

 

 

信州で生まれ育った「工房信州の家」が目指す、よい家づくりとは何か?

平成13年より「信州の木で信州の家をつくる」取り組みを始めたところ、あるお客様から「自分の持ち山の木を使ってもいいか」と相談を受けました。その家づくりが、新鮮な驚きの連続だったのです。まず契約の折、若夫婦世帯だけが暮らす家なのに、ご両親やご祖父母も含め総勢8人がお見えでした。皆さんわが家の山の木を使うことにとても関心をお持ちで、とくに山を育ててきたお爺様やお父様が見せる、誇らしそうで満足げな表情が印象的でした。

信州で生まれ育った「工房信州の家」が目指す、よい家づくりとは

引き渡しもやはり家族総出です。早速、お爺様の柱自慢が始まりました。お父様は木を伐って曳き出した際の苦労話に花が咲きます。お施主さんも、職人さんも、こんなに盛り上がってうれしそうな引き渡しは、私たちにとって初めての経験でした。

信州で生まれ育った「工房信州の家」が目指す、よい家づくりとは信州で生まれ育った「工房信州の家」が目指す、よい家づくりとは

「あれ、何か違うなあ。今までの家づくりと。」

きっと、家づくりに家族いっしょに関わることが楽しいんだ。自分たちだけの想いを込められるから、どんな家より愛着が持てるんじゃないか。そうだ。出来た家に初めから家族の思い出がぎゅっと詰まっている。家づくりには物語りがあるんだ。それは、住宅会社がどんなにスペックを競っても提供できない価値でした。

家づくりというのは、それぞれのご家族が自分たちにとっての物語を育てていくことに違いない。もちろん工房信州の家は、品質や性能、デザイン性などにとことんこだわります。

でもその先にある家づくりが、私たちの中で見え始めました。

信州で生まれ育った「工房信州の家」が目指す、よい家づくりとは

 

 

家づくりは、家族づくり。人づくり。

いま、当社の家づくりは、すべてのお客様を地域の山にご案内して、わが家の柱となる木を選んでもらうところからスタートします。その後の工程でも、家族の皆さんに関わってもらうことがたくさんあります。あの日、私たちが見たご家族と同じように、家族の家づくり物語を育てていってほしいからです。

「それって自己満足なのでは?」と思いますか。その効果を確かに数字にできませんが、ひとつだけ自慢したいことがあります。こうした家づくりを経験された家族のお子様は、その笑顔や人への接し方がよそとは違うんです。そのお子様たちは、想いを込めて家づくりに取り組むご両親の背中を見てきました。お子様たち自身にも役割があり、手間をかけること、想いを込めることの大切さを知りました。ご両親とともに過ごすそんな時間が、お子様の成長によい影響を与えると私たちはその時確信しました。

家づくりは、家族づくりであり、人づくりです。そんな夢を社員と職人さん全員で持ち続けられる会社でありたいと私たちは思います。この信州でたくさんのご家族がかけがえのない物語を綴っていくお手伝いがしたい。それが工房信州の家というブランドの使命だと思っています。

「信州の木で信州の家づくり」を始めたとき、林業者や製材所の皆さんとの間にネットワークができました。家族の物語を育てる家づくりがあることに気づけたのもそのおかげです。だから、その連携をもっと高めたら、もっと素敵な家づくり物語ができるはずで、まだまだ家づくりに描く夢には続きがあると心躍っています。

家づくりは、家族づくり。人づくり。

家づくりは、家族づくり。人づくり。家づくりは、家族づくり。人づくり。

 

 

生産性ではなく、質の良さを備えた素材を

大量生産の時代に必要とされたのは、短い工期で、均一な品質で施工ができることでした。職人技と日数が必要な塗り壁は施工しやすいクロスになり、個性のある無垢材は加工が容易な合板やフローリングへと取って代わられ、その弊害としてシックハウス症候群も問題となりました。シックハウスを発症すると、もうその家に住み続けることはできません。

生産性ではなく、質の良さを備えた素材を

特に、小さな乳児は大人の5倍近くの空気量を吸っており、身体に不要な物質を分解する代謝機能も未発達、さらに床など建材に近い位置で生活するため住環境の影響を強く受けざるを得ません。ご家族の健やかな生活の舞台となる住まいが、ご家族の健康を脅かす原因となることは決して許されません。特にこの新鮮な空気に満ちた信州で、住まいは安心して深呼吸できるような空間であるべきです。

私たちは、自然素材で仕上げた健康住宅にこだわって、十年以上前から取り組んできました。自然素材のメリットは、もちろん、有害な化学物質がほとんど出ないことです。その上、木材や塗り壁は優れた調湿機能を持ち、さらに二酸化窒素やオゾン等の減少などの空気清浄化機能を持つことが近年科学的にも証明されてきました。きれいな空気に包まれた住空間は、そこに住む人の健康はもちろん、建物を長期にわたって良好に維持することにもつながります。

 

 

おわりに

信州は豊かな環境に満ち溢れた土地です。四季折々の自然の移り変わりを、暮らしの一部として楽しむ、豊かな住まい方ができるのです。

夏には、打ち水された庭から、すだれ越しに流れ込む涼風が室内を満たします。夕方には、爽やかな風に吹かれながら、ウッドデッキで賑やかなバーベキューパーティーです。

秋の深まりとともに、稲穂は黄金色に輝き、山々は鮮やかな紅葉に覆われ始め、夜にはお月見を―、そんな自然の色彩を楽しみながら、土間サロンでコーヒーを味わうのも素敵です。

冬の寒い朝、真っ青な空の下に連なる白く輝くアルプスの稜線と一面の雪景色―、雄大な自然の風景を、大きな窓越しに贅沢に楽しみます。夜が更けたら、薪ストーブの揺らめきを照明代わりに、夫婦の時間をゆっくりと過ごしましょう。

そして春になれば、こぶし・梅・桜・花モモ・花みずき・ツツジなどが咲き誇り、それを追いかけるように広がる新緑を眺めながら、時には土間サロンで朝食をとるのも良いでしょう。

「工房信州の家」は、こうした信州の素晴らしい自然環境や景観を活かし、そして住まう方がそれらを楽しめる家づくりなのです。

さらに、夏涼しくクーラーなしで過ごし、冬暖かく薪ストーブ一台で過ごす―。春夏秋冬、一年を通して本当の意味で快適に過ごすためには、機械で温湿度を年中一定に調整する魔法瓶のような家ではなく、自然環境を住まいに取り入れ上手に活かす工夫をすること―。それが、『工房信州の家 設計Design Code』です。

 

日本の住宅の歴史と工房信州の家の挑戦

住まいのベースとなるのは、夏の打ち水やすだれ、冬の薪ストーブなど、昔からの信州らしい住まい方。

さらに、信州の気候を活かすエアパスソーラー工法で、過度な冷暖房に頼らず、自然と共生する住まいとなります。

また、敷地の広い信州にピッタリの土間サロンやウッドデッキがあれば、暮らしは一段と豊かさを増します。

そして、木目や香りまで楽しめる良質な信州の木材と、空気を浄化し調湿機能を備えた珪藻土などの自然素材で仕上げます。

さらに、信州の景観に馴染むデザインとすることで、住む人にとってはもちろん街全体にとっても価値ある建物となります。

もちろん大前提として、地震に強い耐震等級3等級とし、建築基準法で定められた基準(数百年に一度の大地震でも倒壊・崩壊しない)の1.5倍の建物強さで、災害からご家族をお守りする安心の住まいです。



工房信州の家 設計 Design code

日本列島はその地域ごと、多様な気候風土があります。雪の多い新潟や、台風の多い鹿児島や、密集地である東京など、それぞれの土地柄にぴったりと合ったデザインで住まいづくりをするべきです。

しかし、全国展開のハウスメーカーが高いシェアを占めている日本では、全国どこでも同じデザインの住宅が建てられているのが現状です。

季節の移ろいが豊かな信州には信州に似合う、信州でしかできないデザインの住宅があるはずです。

地形、風土、敷地を知り、隣地の境界は遮へいせず、通風、日照がとれるよう配慮する。外まわりは、花木を上手に配置することで、周囲にとけ込む住宅になり、室内にいても季節を十分に感じることができます。また、夏は木陰をつくり、冬は日を室内に取り込む役割を果たします。信州の四季を快適に過ごすために、工房信州の家では設計デザインコードを定め、敷地に合った住宅をご提案しています。

  • 四季を快適に過ごすために、地形、風土、敷地を知る
  • 隣地の境界は遮へいせず、通風・日照がとれるよう配慮
  • 沿道からは花木や中低木を配置し、季節感を演出
  • 道路からの進入部分には自然の素材感を感じる材料を採用

工房信州の家 設計 Design code

工房信州の家 設計 Design code


 

  • エアパス工法による断熱材と小屋裏・床下換気口の設置
  • 山並みと調和する切り妻・大屋根のデザイン
  • 落ち着きがあり暖かさを感じる外壁色、一部の板張り採用
  • 耐震等級3等級(耐震強度1.5倍)
    災害時の避難所と位置づけられた施設と同等レベル相当

工房信州の家 設計 Design code

工房信州の家 設計 Design code

工房信州の家 設計 Design code

フォレストコーポレーションの住宅のブランド名を『工房信州の家』とし、取り組みをスタートしてから十数年。当初はまだまだ漠然としたイメージでしかなかった「信州らしい家づくり」も少しずつ形になり、私たちの家づくりに対する考え方も明確になってきました。

私たちはこれからも、信州に特化した住宅会社として、信州の恵まれた環境を住まいに活かし、また信州の暮らしを存分に楽しむことのできる「信州らしい家づくり」を追求し続けます。そして、職人さんと力を合わせて共に学び、さらなる発展を目指し、信州にお住まいの皆様に喜んでいただける「工房信州の家」づくりに取り組んでまいります。

工房信州の家 設計 Design code