信州の木
県産材の活用に挑んで20年
信州の家は、信州の木で建てるべきだと私たちは考えます。理由は大きく4つ。
なにより木の家は暖かく快適で長持ちするから。
自給自足可能な資源だから。
信州の木を使うことが林業など木に関わる産業を持続可能にし、森を守り育てることになるから。
木を巧みに使う職人の技を後世に伝えることができるから。
工房信州の家は主要構造材すべてに県産材を用いて、これまで延べ1300棟の住まいを施工してきました。だから、これから始まる家づくりも、家ができた後の暮らしも、信州の森と確かにつながっていることを知っていただきたくて、私たちはお客様を森へお招きし、わが家の大黒柱になる木を選んでもらっています。
生きた木と暮らそう
「わぁ~、木のいい香り」工房信州の家の展示場や完成住宅に入ったお客様のほとんどは、最初にこうおっしゃいます。私たちの家づくりでは、柱・梁・桁・土台といった主要構造部に100%長野県産材を使用しています。その他、構造材・床材・板材など適材適所に県産材を使用。家が完成すると見えなくなる壁の中まで県産材にこだわること。それが、木の香りに包まれ、まるで森の中にいるような居心地の良さにつながっているのです。
信州の家は、信州の木で。
県産材使用率85%を誇る私たちの家づくり。しかし、かつては森の国・信州でも地域材の調達がスムーズにいかない現状がありました。そこで私たちは2003年に、地元の製材業二社とともに県産材ストックヤードを開設し、山仕事とも連携したグループを組むことで、長野県一帯で良質な県産材を集める木材一貫生産システムをいちから確立しました。
この家づくりグループにより、産地から施工現場まで一貫した管理体制を築くことができ、安心安全な信州木材を提供することができています。「信州の木」「地元の木」にこだわることは、家に使う木が、どこで・誰の手によって・どのように育てられ、それがどんな人の手によって刈り出され、誰の技で製材されて材木になったのか…という木材のトレーサビリティーをはっきりさせることにも直結することなのです。
さらに、家づくりグループの発足により2012年から「あなたが選ぶ山の木で家づくり」をスタートしました。すべてのお客様を山へ招待し、自分の家に使う木を選んでいただく取り組みです。この取り組みにより、自分の家づくりが「信州の森を豊かにする」という実感を持つことができます。さらに選木・伐採の過程に関わることで、自然の恵みを受けて住まうことへの感謝の気持ちと、家への深い愛着も育まれます。
工房信州の家「県産材天然乾燥ストックヤード」
一般的に製材した木材の乾燥方法は2つ。機械を使う「人工乾燥」と、太陽と風の中で自然に乾燥させる「天然乾燥」です。現在は効率を重視し人工乾燥が主流ですが、家づくりグループでは駒ケ根市に「天然乾燥ストックヤード」を設け常時30棟分の県産材を天然乾燥させています。化石燃料を使わず環境に優しい乾燥方法で、色艶の美しさと粘り強さを兼ね備えた天然乾燥の梁材を皆様の家にお届けしています。
この家づくりグループの発足と天然乾燥ストックヤードの運営は、非常に不安定だった長野県産材の供給ルートを再構築し、長野県一帯から、常時30棟分の良質な県産材を集める拠点となっています。この取り組みは各方面から評価をいただき、2015年度にはグッドデザイン賞を受賞しました。
信州の森の現状。木材の地産地消を目指して-
信州の県土に占める森林面積の割合は約8割です。日本全体でみても国土の約7割が森林。木材は日本国内で自給自足可能な数少ない資源なのです。
では何故、これだけ豊かな森林資源がありながら「ウッドショック」が起きてしまったのでしょうか。理由は、戦後の日本が生み出した負のサイクルにあります。
戦前は自分たちの山の木や国内の木を使って家づくりを行うのが当たり前でした。しかし戦後の高度経済成長期・バブル期を経て、家を建てては20年ほどで壊し、また建てるといった「スクラップ&ビルド」の考えが普及しました。その影響は今日まで続き、海外から安価に木材を輸入し家を建てることが主流となっています。
※参照:林野庁HPより
国内の木材を使わずに輸入材を使い、それにより衰退していく林業。手入れが行き届かない森林が増え、日本の木材は“使わない”ではなく“使えない”時代になりました。
そして現在、海外での木材需要の高まりから輸入材の価格が高騰し、国内の木材利用に注目が集まりました。しかし林業は衰退しているため山から木を切り出せず、切り出したとしてもその木を加工する製材所が足りずに供給が追い付かない。こうしてウッドショックが起きてしまったのです。
ここ数年、台風や豪雨による土砂災害が頻発しています。本来森林は自然のダムとして水を蓄え、浄化し、災害から町を守ってくれる役割を持っています。しかし手入れされない森林の木々は、根をしっかり張ることが出来ず細々と育ちます。木々の根が張り巡らされていない森は地盤が軟弱になり、大雨に耐えきれなくなった地面が崩れ落ちてしまうのです。
※長野県HPより
工房信州の家が目指すのは、県産材を使った家を建てることで良いサイクルを生み出すこと。
健康な森づくりのために山の手入れは欠かせません。手入れを進めるためには、地域材の需要を高め山の木を使うことが重要です。すると林業が活性化され健康な森が保たれます。健康な森から生まれる良質な木材を使い長く住める家を建てる。そして山に新たな苗木を植える…。家づくりを通して、このように回り続けるサイクルを目指しています。ちなみに、工房信州の家が3棟建つと東京ドーム1個分の森林が整備される効果があります。
信州の風土で育った木が、信州で暮らす私たちの家になるのがいちばん自然であり、明日の信州の風土づくりにもなる。これが、私たちが信州の木を使うことにこだわる理由です。