【信州の匠】ステンドグラス 山﨑一彦さん(アーツプロデュース)

公開日:2019/02/16(土) 更新日:2021/04/13(火) 家づくり

建物を引き立てるステンドグラス
一生に一度の作品を、もっと身近に


大学卒業後からステンドグラス一筋37年の山﨑一彦さん。
千曲市 戸倉上山田温泉の中心街にご夫婦で経営する体験工房を構え、
ステンドグラスの普及に励んでいる。

ステンドグラスで、住まいがさらに引き立つ

「ステンドグラスは好き嫌いがはっきり分かれる商品です。
でも"マイホームにステンドグラスを入れるのが夢"とおっしゃるほど、思い入れが強い人も多い。
その人の一生に一度の夢の実現に関わることのできる、誇らしい仕事だと思っています」と語る、ステンドグラス作家の山﨑一彦さん。
工房信州の家のひとてま工房体験先となって4年目、これまでに30組ほどの家づくりに関わってきた。

一昨年末に竣工した長野若里モデルハウスには幅広のステンドグラス作品を据え付け、その美しさには訪れた人からの反響も大きい。

建具や窓などにはめ込む作品は、正確な寸法と緻密な設計、納期、予算などシビアな条件に縛られるが「制約があるからこそ、その中でできる最高の物にしてやろうと奮起できる。もっと良い作品にできたのでは…と、あとから後悔するのは嫌なので、その時の最大限の力を注ぐことを信条にしています」

建築におけるステンドグラスの位置づけを尋ねると、建物全体の引き立て役、との答えが返ってきた。
「例えば絵画も、キャンバス上で見るのと、額に入れたときではがらりと変わる。ステンドグラスも建築に収めたときにより良く見えるように、と考えて制作しています。作品だけに注目が集まるよりも、空間全体を見渡して"想像以上に良い"と喜んでもらえるときが最高ですね」

 

長野若里モデルハウスの建具にはめ込んだ、全長約2mのステンドグラス。
ブルーとクリアのシンプルな色使いながら、ペンシルベベルの面取りガラスで
光が美しく屈折する豊かな表情が楽しめる。

 

美しさも、危なさも、体験で知ってほしい

私たちは日常生活で、ガラスに触れることは思いのほか少ない。
ガラス製品が割れたときは、手で触れないように注意して始末する。

もっとガラスに身近に触れてほしいとの思いから、山﨑さんは独立した当初から手作り体験を積極的に行ってきた。
「素のままのガラスに触れることで、その質感、美しさ、危なさを知ってほしい。
ただでさえステンドグラスは敷居が高いと思われがちなので、特別な人たちだけの贅沢品というイメージを変えたいと思っています」

山﨑さんの3人の子どもたちも幼稚園児の頃からガラスに親しんできたそうで、「彼らにとってガラスは、イマジネーションがふくらむ絶好の遊び道具。流血しながら、楽しそうに作品を作っていましたよ(笑)」

息子さんが幼稚園児の頃に作ったという作品。
大人には出来ないデザインと色使いに面白味を感じ、
今も工房の一角に飾っている。


 

建物を忠実に再現する、ステンドグラス模型

山﨑さんには、他のステンドグラス屋には真似のできない強みがある。

それが、住宅のミニチュア模型作りだ。

実際の施工図面を基にした精巧なつくりがモットーで、古い建物で図面が存在しないときは建物写真を参考に図面をおこすことから始める。「もっとデフォルメしてしまえば楽なのでしょうが、忠実に再現するという意地があって妥協ができないのです」と山﨑さん。

これほど完成度の高いステンドグラス模型は非常に珍しく、全国から問い合わせがあるという。

この模型作りが可能となる背景には、山﨑さんの経歴が大きく関わっている。実は山﨑さん、大学時代は建築学科で学び、図面と模型製作は専門分野なのだ。

当初は建築家を志していたという山﨑さんが、ステンドグラスに興味を持ったのは大学の授業でのこと。装飾ガラスの科目の受講がきっかけで街中のステンドグラスに目を留めるようになると、その色遣いや光の通り、四季や時間で刻々と変わる豊かな表情に魅了されたのだという。

1/50の縮尺の正確な住宅模型。
実際の施工図面を基にステンドグラスの厚みや特性を考慮しながら型紙に落とし
100ピース以上のガラスを組み合わせて立体に仕上げる。
一棟当たり一週間から10日の作業時間がかかるという。

 

続けることが財産に

大学卒業後は、東京の工房で二年間修業したのち、大手チェーン店のステンドグラス部創設メンバーに。日本全国や台湾への進出に伴い、各店舗へ収めるための大規模制作に明け暮れた。

「大きな作品作りは、もはや肉体労働。大量の発注依頼にどう動いて効率よく仕上げていくか。この時期にがむしゃらに働いた経験は体に染みつき、今も財産になっていると思います」

平成元年には独立し、自分の店を持った。

家族を養う覚悟を持って"年中無休”を自分に課し、この30年で休んだのは数日間だけだという。初志貫徹で30年間真摯に続けてきたからこそ、仕入れ先と良い条件での信用取引が成り立ち、街なかで過去の作品を目にして山﨑さんに声をかけるお客様もたくさんいる。

「趣味を仕事にするとき、一番重要なのは"続けること"だと思うのです。才能あふれる作家はたくさんいますが、何らかの挫折や不満をきっかけに諦めてしまう人が多い。今となっては、反対していた公務員の父親も、"ウチは母子家庭"と冗談めかす妻も、よくここまで続けたねと言ってくれています」

ステンドグラス工房 アーツプロデュースの山﨑さんご夫婦。
年中無休で9:00~20:00まで、毎日営業を続けている。

 


 

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