【東信移住座談会・前編】子育てをきっかけに信州へ。移住者が語る、東御・小諸・御代田・上田の暮らし

「子どもを、もっとのびのび育てたい」
「自然の近くで暮らしながら、東京の仕事も続けたい」
「移住先として、東信エリアのどのまちを選べばいいのだろう」
信州への移住を考えるとき、子育て環境や仕事、地域ごとの暮らしやすさは、特に気になるポイントではないでしょうか。
今回は、信州の東側エリア(東信エリア)、東御市・小諸市・御代田町に移住した工房信州のオーナー様と、約20年前に長野県上田市へ移住したGokalab代表のキムさんを迎え、東信移住のリアルを語っていただきました。
前編では、移住を決めたきっかけ、東信4エリアの魅力、仕事と子育てを両立する日々の暮らしをご紹介します。
INDEX
座談会メンバー紹介

平野さん|東御市・移住2年目
ご夫婦とお子さん1人の3人家族。子育て環境を見直したことをきっかけに移住。リモートワークをしながら、プルーン栽培にも挑戦しています。
めぐみさん|小諸市・移住5年目
ご夫婦とお子さん2人の4人家族。家族旅行で訪れた小諸の自然や温泉に魅了され、転職を機に移住。普段はGokalabでリモートワークをしています。
ブルさん|御代田町・移住2年目
ご夫婦とお子さん2人の4人家族。子育て環境を求め、東京から御代田町へ移住。週3日は東京へ新幹線通勤し、週2日はGokalabで働いています。
キムさん|上田市・移住20年目
名古屋出身。結婚を機に長野県へ移住。御代田町のコワーキング&カフェスペース「Gokalab」代表として、東信地域の人や仕事をつないでいます。
柄沢|工房信州・軽井沢支店マネージャー
今回の座談会の進行役を務めます。
▼東信エリアMAP

なぜ東信へ? 移住を決めたきっかけ
子どもが「遊びたい」と思ったときに遊べる環境へ
柄沢
まず、皆さんが長野県へ移住した理由を教えてください。
キムさん
私の場合は、約20年前の結婚がきっかけです。もともと名古屋出身で、長野県にはほとんどゆかりがありませんでした。
名古屋には朝のモーニング文化がありますが、当時こちらにはモーニングを食べられるお店がほとんどありませんでした。それなら自分でつくろうと思い、パンづくりを始めたのが、こちらでの暮らしの始まりです。
ブルさん
移住を考えた理由は二つあります。
一つ目は、東京の保育園に通っていた子どもの環境です。保育園がよかれと思って決めている方針と、私たちが望む子育てが、あまり合っていませんでした。
例えば、暑さや事故への配慮から、子どもが庭で遊べる時間が制限されていました。子どもが毎日、「遊びたかったけれど遊べなかった」と話すのを聞き、もっとのびのび育てられる場所があるのではないかと考えました。
ブルさんのご自宅の庭。今ではお子さんたちが裸足で走り回る。
もう一つは、自分たちが理想とする生活を実現したかったことです。
友人に家へ来てもらい、できれば泊まってもらい、一緒にご飯を食べる。東京で暮らしていたときには難しかった、そんな時間を持ちたいと思いました。
自分たちがしたい生活と、子どもにしてほしい生活の両方を手に入れたい。それが移住の理由です。
キャンプと温泉で感じた「ここで暮らしたい」
めぐみさん
家族で小諸へ何度かキャンプに来たことが、移住のきっかけです
自然が本当に豊かで、子どもたちも楽しそうにしていました。日帰り温泉へ行ったときには、浅間山の絶景にも心を打たれ、「こんな景色を見ながら、温泉に入れる場所で暮らしたい」と思いました。
その後、転職のタイミングでリモートワークが可能になりました。必要であれば新幹線で東京へ通勤できる場所でもあったため、「今なら思い切って移住できる」と決断しました。
子どもたちがのびのび学べる環境があることも、大きな理由でした。
住まいの周辺に広がる自然。日々、キャンプをしているような暮らしを楽しんでいる。
マンションで「怒らなくていいこと」を怒る日々から
平野さん
私たちも、移住の一番大きな理由は子育てです。
埼玉のマンションに住んでいたころ、子どもが1歳ぐらいで、歩いたり、はいはいしたりする時期でした。本来なら成長を喜びたいのに、足音が響くため「やめなさい」と言わなければなりません。
怒らなくてもいいことなのに、住環境のために怒らなければならない。妻と「これはよくないよね」と話していました。
休日に遊びに行けるのも、マンションの間にある小さな公園ぐらいで、そこにも人がたくさんいました。
当時は夫婦ともにほぼ完全なテレワークでした。それなら埼玉に住み続ける必要はないのではないかと考え、自然豊かな場所を探しました。
海より山が好きで、東京へも新幹線で行けることから、軽井沢から上田の間で探し始めました。子どもをのびのび育てたいという思いが、移住の決め手です。
平野さんの住まいは田園風景が広がる立地。家の中でも外でも、のびのびと過ごしている。
東信4エリア、それぞれのまちの魅力
東信エリアと一口に言っても、軽井沢に近い御代田町、田園風景が残る東御市、歴史と新しい文化が混ざる小諸市、都市機能がまとまった上田市では、暮らしの特徴が異なります。
御代田町|軽井沢・小諸・佐久・東御の「ちょうど真ん中」
ブルさん
御代田町の魅力は、どこへ行くにも距離感がちょうどいいことです。
軽井沢へは車で約15分、小諸へは約10分、東御へは約20分、佐久へも10~20分ほどで行けます。東信の各地域の、ちょうど真ん中にいるような感覚です。
「軽井沢に友人が来ている」と聞けばすぐに会いに行けますし、東御のワイナリーでイベントがあれば参加できます。小諸の城下町や動物園へ遊びに行くこともできます。
自分のまちにすべてがそろっているわけではありませんが、周辺のまちにある魅力を、日常的に楽しめる距離感です。
それでいて、自然もまだしっかり残っています。庭から浅間山が見える朝には、こうした豊かな環境で暮らせることのよさを感じます。
ご自宅隣には雑木林がある。四季の移ろいを感じながら暮らしている。
キムさん
軽井沢と御代田は、少し標高が変わるだけでも気候が違います。
軽井沢は湿度が高めですが、御代田まで来ると、からっとした空気を感じますよね。
ブルさん
軽井沢の森も魅力的ですが、御代田は森と市街地の中間にあるような、絶妙な環境です。そこが暮らしやすさにつながっていると思います。
東御市|田園風景とブドウ畑が残る、これからのまち
平野さん
東御市は、まだ移住者がそれほど多くなく、自然や農業が地域にしっかり残っています。
私は東御市の中でも標高が低い海野宿の近くに住んでいます。目の前には田んぼが一面に広がり、その奥に小高い山が見える、いわゆる田舎らしい景色です。

一方、国道18号から浅間サンラインのほうへ上がっていくと、景色が大きく変わります。ワイン用や食用のブドウ栽培が盛んなため、ブドウ畑が広がる風景を見ることができます。
海野宿も、観光地としてつくられた場所ではなく、今も人が暮らし続けている宿場町です。
まだ大きく盛り上がっているまちではありませんが、少しずつ空き家に新しいお店が入っています。これから変化していく楽しみも含めて、自慢できるまちだと思います。
キムさん
海野宿のように、観光地化されすぎず、今住んでいる人を大切にしている宿場町は貴重です。
今も多くの家に人が住み、住民自身が手入れをしながら景観を守っています。それが、海野宿らしさにつながっているのだと思います。

小諸市|歴史ある街並みと新しい人が自然に混ざる
めぐみさん
小諸の魅力は、自然体なまちであることです。
移住者は増えていますが、小諸駅前には歴史のある街並みが残り、風情があります。一方で、最近は新しいお店も増え、まちが活性化しています。
昔からあるものと、新しく入ってきた人や考え方が、無理なく混ざりつつあるように感じます。
私の家は浅間サンラインに近い場所にあります。サンラインは視界が開けていて、ドライブすると本当に気持ちがいいです。
ブルさん
小諸から西へ向かうときには、アルプスが見える場所もあります。あの景色を日常的に見られるのは、すごく贅沢ですよね。
東信地域を横断する「浅間サンライン」。八ヶ岳を一望でき、周辺では高原野菜や果樹が多く栽培されている。
めぐみさん
天気のいい日は、景色を見ているだけで癒やされます。
温泉の選択肢が多いことも、小諸の魅力です。布引温泉は、地元の方が多く利用する、落ち着いた雰囲気の温泉です。菱野温泉などの日帰り温泉もあり、その日の気分で選べます。
上田市|歩いて楽しめる、東信のコンパクトシティ
キムさん
上田市は、東信エリアの中では人口が多く、都市機能がまとまったまちです。
城下町として上田城を中心に発展し、新幹線の駅から歩いて行ける範囲に、日常生活に必要なものがそろっています。移住先として選びやすいまちだと思います。
私が特に好きなのは、ふらっと歩いて行ける小さなお店がたくさんあることです。昼に楽しめる店も、夜に立ち寄れる飲食店もあります。
ブルさん
しなの鉄道の駅に近い場所へ住めば、電車で上田へ飲みに行き、帰宅後は駅から歩いて帰ることもできます。
平野さん
車が必要な地域だからこそ、車を一度停めたあと、家族で歩いて散策できる場所は貴重ですね。
上田は、子どもと一緒にまちを歩く楽しさがあります。
移住後の平日と休日。仕事と子育てはどう変わった?
リモートワークをしながら、プルーン農家を目指す
平野さん
平日は、軽井沢の幼稚園へ娘を送るところから始まります。
今の仕事は基本的に場所を選ばないので、近くのカフェなどで仕事をし、迎えの時間になったら娘と一緒に東御へ帰ります。仕事が残っている日は、夜に少し続けます。
メインの仕事とは別に、東信エリアでプルーンを育てたいと思い、果樹園を始めるための農地を探しています。
実際に佐久周辺の果樹農園へ手伝いに行き、仕事をしながら栽培を学んでいます。メインの仕事がない日は、プルーンの摘果作業などをしています。
休日は、自宅の庭で畑や果樹栽培をしています。
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娘も自然に触れることが大好きになりました。朝、家族でおにぎりを握って庭へ出て食べ、暑くなったら家に入り、涼しくなったらまた外へ出る。目の前の田んぼを散歩することもあります。
家の周りだけで、一日を楽しく過ごせることが増えました。
仕事の前後に家庭菜園を楽しむ
めぐみさん
平日はGokalabで仕事をしています。
朝は、気温が上がる前に庭仕事や家庭菜園をします。小さな畑ですが、自分で土を耕すところから始めたので、掘っても掘っても石が出てきて、本当に大変です。
そこで、バックホー、つまり小型のショベルカーも使っています。大胆に雑草をなぎ倒しながら作業することもあり、「何をしているんだ」と思われるようなこともしています。笑
ひと汗かいたあとに朝ご飯を食べ、Gokalabで仕事をします。夕方に家へ帰ったら、野菜の育ち具合を見て、「いつ収穫できるかな」と楽しみにしています。
それが、夏の日々の過ごし方です。
週3日は東京、週2日は御代田で働く
ブルさん
月曜日の朝に軽井沢駅から新幹線で東京へ行き、仕事をして実家に泊まります。水曜日の夜に新幹線で戻り、御代田へ帰ります。
週3日は東京、残りの2日は御代田で働く生活です。
御代田にいる日は、子どもを幼稚園へ送ることもあります。朝、小さな家庭菜園で採れた野菜を子どもと確認し、朝ご飯を食べます。
その後、Gokalabで仕事をし、夕方4時か5時には一度切り上げて家へ帰ります。子どもと一緒にお風呂に入り、ご飯を食べたりつくったりします。仕事が残っていれば、子どもが寝たあとに再開します。
土日は、本当にいろいろなことをしています。
地域の人から誘われて、しょうゆやお酢をつくったり、ワイン用ブドウの摘果作業を手伝ったりしました。流しそうめんをするために、朝6時から家族で竹を取りに行ったこともあります。
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自分が何かをやりたいと思ったとき、「一緒にやろう」と言ってくれる大人がたくさんいます。
反対に、自分では思いつかなかったことに誘ってくれる人もいます。そうした人たちと一緒に、楽しく暮らしています。
上田と御代田を行き来し、人と地域をつなぐ
キムさん
私は、上田と御代田を日々往復しています。
ここ10年ほど、地域に根差した仕事や活動に関わることが多く、Gokalabの仕事でも、東信のさまざまな場所に顔を出しています。
週末にはGokalabでイベントを開くこともあります。先日は「夏至祭」を開催し、たくさんの方に集まっていただきました。
地域の中で人と人が出会い、つながっていく場所をつくることが、今の私の暮らしと仕事になっています。
御代田町にある《Gokalab》の様子。「研究所」のようなコワーキングスペースに、多くの人たちが集う。Gokalab
まとめ|東信移住は、仕事を手放さずに暮らしを変えられる

今回の座談会から見えてきたのは、「移住=仕事を辞めて田舎暮らしを始める」という一つの形だけではないことです。
新幹線で東京へ通勤しながら御代田で子育てをする。リモートワークを続けながら東御で農業に挑戦する。小諸の自然を楽しみながら、普段はコワーキングスペースで働く。上田に暮らし、地域の人や活動をつなぐ。
東信エリアでは、都市部の仕事との距離を保ちながら、子どもが自然の中でのびのび過ごせる暮らしを組み立てることができます。
後編では、移住前に感じていた不安や、移住後に分かったギャップ、地域コミュニティとの関わりについて、さらに本音で語っていただきます。



